山吹薫は何度も心の中でそれを反芻しつつそれを覚えようと頭を巡らせる。それを見て内海青葉は大きく笑みを浮かべ左右に大きく体を揺らす。
ふふーん。まずは何を考えるかは分かったねー。そしてもちろん情報収集はここでもしっかりと行う。それはどの分野でも同じだけど、情報はあることに越したことはないねぇ。
確かにそうですねー疾患名や既往歴、発症までの経過や入院前の生活・・・得るべき情報はたくさんありますよね。
それらは入院時に医師や看護師によってされることも多いけれど、関わる時間もまた多い僕たちもそれを念頭に置かなければなりませんね。ICUでもその情報の意味合いもまた変わってくるでしょうし。
それはそうなのだ。どんな分野でも共通する部分はしっかりとある。しかし今日は真面目に話を聞いているなと山吹は進藤守を横目で眺めた。
新人ちゃんの言う通りだねー。入室する患者の身長や体重はその人の栄養状態を把握したりすると共に人工呼吸器や各種治療の設定にも関わるよー。人工呼吸器では一回換気量が体重1Kg当たり6−8mlで設定されるからその後の離脱も含めて重要なポイントにもなるね!もちろん栄養状態の改善の指標ともなるし、心不全患者なら利尿を図り体の水分を落として心臓の負荷を減らすことにも当然役立つよー。
確かにいろいろな意味合いが変わってきますね。それに我々が特に関わると言ったら疾患にもよりますが入院前のADLの詳しいところとそれに伴うフェイジカルアセスメントでしょうか。もちろん意識レベルにもよりますが独居であると離れている家族の情報と解離していることもまたありますから。
生活環境を想定出来るような情報を得ることも大切だよな。食事だとか認知面、服薬情報だとか普段やる情報収集と同じような気もするけど、それが一種の治療目標ともなる訳だから俺たちもまたしっかりと可能な範囲でお話を聞くことが必要だな。
当たり前のことをこなすことは大変だ。しかもそれを求められるレベルで行うのは向き合うたびに自分の知識の無さを思い知らなければならない。それは楽しくもありやはり辛くもあると山吹はそう思う。
他にも安静度についても日々確認が必要だよ。一般病床以降だったらもちろんイベントの度にその都度相談は必要だけど、ICUの1日・・・いやその時々で常にイベントは起きていると考えた方がいいね。病態把握と共にそれをキャッチしてその都度相談しつつリハビリを進める。もしくは進めないという判断もまた必要になる。その一瞬一瞬のアセスメントが非常に重要になるさー
確かにベッド一つ一つに医師が常に常駐している訳ではありませんからね。まずは運動療法を行えるかどうかの判断が必要となる訳ですね!
そして出来るだけ早く、計画的にICUから退室出来るように治療と共に二次的合併症を予防し、ADLを少しずつ元の生活に戻していく。そのために十分なモニタリングを行えるようにする・・・ということですか。
そゆことー。と内海は体をしっかりと歪めつつ山吹の顔を覗き込んだ。知れば知るほど自信は無くなっていくのだけど、不思議と心の中が高揚していく。山吹薫はそんなことを考えた。
山吹薫の覚書87
・情報収集はいつも通りに行うが、いつも以上に疾患も念頭に置きつつ当然しっかりと行う。
・チームでの連携は密に行い、安静度の指示受けなどはアセスメントしその都度行う。
・なんだか・・・知れば知るほど面白い。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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